陰性感情が湧いたとき、医師ができる一番シンプルな対処法

研修医のころ、こんな感情を持ったことはないだろうか。

「昨日も同じ訴えで来てる」

「検査は全部異常なし、なのに毎回来る」

「もしかして、大げさなんじゃないか」

陰性感情、とよばれるやつだ。

医師なら誰でも経験するし、経験すること自体は悪くない。

問題は、それが診察の質に影響してしまうこと。

では、どうするか。

「感情をコントロールしよう」と意識するのは、実はあまり効かない。

もっとシンプルな方法がある。

**患者の”生活の壊れ具合“を、具体的に聞くことだ。**

重症度評価は「数値」じゃなくて「生活」を見るもの

たとえば痛みの患者に対して、こう聞いてみる。

– 「夜、痛みで目が覚めることはありますか?」

– 「痛み止めは飲んでいますか?」

– 「痛いとき、動くのを止めないといけないくらいですか?」

– 「仕事や家事はできていますか?」

咳の患者なら、

– 「咳で眠れていますか?」

– 「咳き込んで胸が痛くなることは?」

– 「声が枯れてきた感じはありますか?」

これらは重症度評価の指標でもあるが、

同時に「あなたの日常がどれだけ崩れているか」を知るための問いでもある。

「知る」と、感情は自然と変わる

不思議なことに、この問いかけをするだけで、

医師側の感情が変わることがある。

「夜も眠れていない」と聞いた瞬間、

「そんなに辛かったのか」という気持ちが自然と出てくる。

意識して共感しようとするより、

具体的な事実を知ることで、共感が”後からついてくる”のだ。

これがラポール形成につながる。

患者は「ちゃんと聞いてもらえた」と感じるし、

医師も「この人は本当に大変だったんだ」と腑に落ちる。

身体症状症の患者を精神科につなぐときも

受診抵抗が強い患者、たとえば身体症状症の方を

精神科や心療内科につなごうとするとき、

いきなり「精神科を紹介します」と言っても受け入れられないことが多い。

でも、十分なラポールが築けていれば話が変わる。

「先生には全部話せる」という信頼関係があってこそ、

「先生がそう言うなら、行ってみようかな」につながる。

重症度評価の丁寧な聴取は、その信頼の積み重ねになる。

プラセボ効果という”おまけ”

もう一つ。

思いやりのある診察はプラセボ効果を高めることが、

複数の研究で示されている。

薬の効果だけじゃなく、

「この医師に診てもらっている」という安心感が、

症状の改善に寄与するのだ。

重症度評価をきちんと取ることは、

診断精度を上げるだけでなく、

治療そのものの効果にも影響している。

まとめ:3つの問いを持っておく

難しいことは何もない。

どんな症状でも、この3軸を押さえるだけでいい。

1. **眠れているか**

2. **薬を使っているか(眠剤や鎮痛薬)**

3. **働けているか(日常生活が送れているか)**

この問いかけ自体が、

患者への「あなたの生活を心配しています」というメッセージになる。

陰性感情を「意識して抑える」のは難しい。

でも、患者の大変さを「具体的に知る」ことで、

共感は自然と生まれてくる。

まず聞いてみることから、始めてみてほしい。

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この記事を書いた人

原因不明の紹介患者を診断してきた経験から、外来診療の思考法を共有します。

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